特集 タンパク質間相互作用
17.アポトーシス
癌選択的に発現しアポトーシスシグナル伝達分子と相互作用する分子TUCAN-54の役割
上口 権二郎
1
,
佐藤 昇志
1
Kenjiro Kamiguchi
1
,
Noriyuki Sato
1
1札幌医科大学第一病理学
pp.486-487
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100122
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周知のごとくアポトーシスは遺伝子により制御された自己細胞死であり,多細胞生物が個体として不必要になった細胞を排除する際に重要な役割を果たしている。アポトーシスシグナル伝達機構には非常に多種類のタンパクが関与し,それらが複雑なネットワークを形成している。ネットワークとはいえ,その最小構成はあるタンパクから別のタンパクへのシグナルの伝達であり,この過程はタンパク質間相互作用である。実際,アポトーシスシグナル伝達分子にはタンパク質間相互作用を形成する様々なドメインが知られており,逆に,データベースなどで新しく同定されたタンパクがアポトーシスに重要なドメインをもっていた場合,アポトーシスへの関与が強く推測される。最近,われわれが同定した抗アポトーシスタンパクTUCAN-541)は,アポトーシスシグナルに関わるドメインをもち,腫瘍細胞に高発現し,腫瘍細胞のアポトーシス経路を強く抑制する分子である。
大腸癌に強く発現する抗アポトーシスタンパク分子として,TUCANという分子がアメリカのグループから2001年に報告された2)。TUCANはC末にCARD(caspase-associated recruit domain)と呼ばれるアポトーシスに関わるドメインをもっている。われわれの研究室では以前より腫瘍免疫機構の解析を行っており,この分子に着目し,抗体を作製し,腫瘍細胞におけるタンパク発現を検討した。その結果,TUCANは胃癌,大腸癌,乳癌など幅広い腫瘍組織に発現を認めたが,正常胃粘膜,大腸粘膜,乳腺組織にもその発現を認め,発現量自体も腫瘍と非腫瘍組織での差異を認めなかった。
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