- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
中枢神経系の興奮性シナプスはおもにグルタミン酸作動性であり,その入力の大半はスパインという樹状突起から伸びる1ミクロンほどの小さな棘(とげ)で受容される。スパインは動的構造体で多様な形態をとることが知られているが,多くの精神・神経疾患では細長いスパインばかりとなり,あるいは数の増減もみられる。従って,スパインの形態形成が高次脳機能において重要であることが推測される。最近のプロテオミクス解析によると,スパインを構成する分子は400種類以上存在する1)。スパイン構成分子は,1)アクチン細胞骨格関連蛋白,2)シナプス後部肥厚(postsynaptic density:PSD)を構成する足場蛋白(PSD蛋白),3)細胞接着分子およびグルタミン酸受容体などの膜蛋白の大きく三つに分けることができ,これらが相互に作用してスパインの形成に関わっている。
スパインには細胞骨格のうち,微小管や中間系フィラメントは存在せず,アクチン細胞骨格のみが存在する。興味深いことに,スパインの形成過程にともなって,アクチン結合蛋白の種類が大きく変化する(図1)。スパインの前駆体と考えられる糸状仮足(フィロポディア)では,非神経細胞などにも発現しているトロポミオシンやファシンなどが存在するが,成熟スパインに特徴的なアクチン結合蛋白であるドレブリンはまだ集積していない。ドレブリンは神経特異的なアイソフォーム(ドレブリンA)の発現上昇と並行して,スパインに集積するようになる2)。生化学的解析によると,ドレブリンとアクチン線維との結合は,α-アクチニンやファシンのアクチン線維との結合を競合的に阻害する3)。この作用により,ドレブリンはトロポミオシンやファシンなどをアクチン線維から解離させて,フィロポディアからスパインへの構造変化を引き起こすと考えられる。
Copyright © 2007, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.