特集 タンパク質間相互作用
4.方法・技術
抗体可変領域のタンパク質間相互作用を利用した高感度な低分子分析
上田 宏
1
Hiroshi Ueda
1
1東京大学大学院工学系研究科化学生命工学専攻
pp.370-373
発行日 2007年10月15日
Published Date 2007/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100068
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抗体(免疫グロブリン)を利用した検出法(免疫測定法)は,生体物質の検出および相互作用解析の基本ツールとしての地位を不動のものとしているといってよい。もちろん近年のゲノム,プロテオーム解析の進展にともない質量分析をはじめとしたほかの手法の進歩も著しいものがある。とはいえ酵素免疫固相測定法(ELISA),免疫沈降,Western blotなどに代表される,特定のターゲットを簡便な操作で特異的かつ高い親和性で認識・検出できる免疫測定法の有用性は,今後とも長期にわたって薄れることがないであろう。
抗体はこのようにタンパク質の検出に威力を発揮するが,抗体がその魅力をさらに増している点として,このような高分子だけでなく低分子も認識可能な点があると思われる。かつてABO式血液型の発見者Landsteinerによって見出されたごとく,糖鎖や低分子化合物のように単独では抗原性がない物質でも,キャリアタンパク質に結合したもの(ハプテン)なら抗体はこれを抗原として認識しうる。この性質を利用し,これまで多くの低分子やペプチドについてモノクロ,ポリクロを問わず特異的抗体が作製され,ホルモン・薬物などの分析,また全長タンパク質やその翻訳後修飾の検出などに幅広く応用されてきた。本稿では,これまであまり利用されてこなかった抗体のドメイン間相互作用を利用した,特に低分子を従来より高感度で検出可能な新しい免疫測定法について,おもに筆者らの仕事を紹介したい。
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