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生体科学において,タンパク質の分子間相互作用は機能と直結する重要な要素であり,その詳細を解明することは,これまでもそしてこれからも中心的な研究テーマであり続けるだろう。しかし,この相互作用という見えないものを測るためには種々の工夫が必要となる。現在では免疫応答,シグナル伝達,レセプターリガンドアッセイなどを行うために,いくつかの原理に基づくバイオセンサーの開発が行われており,数種の機器は市販もされている。
例えば,分子が結合することによる質量増加を検出する手法が開発されている。また,表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーと呼ばれる手法は,高感度手法として広く用いられるようになってきた1)。これは,金属表面からの反射光が表面プラズモンの吸収によってある角度のときだけ減少する効果を利用したものであり,原理的には金属に接する溶液の屈折率を測定するものである。よって,タンパク質を金属基盤に吸着させる必要があり,少なくとも数分はタンパク質の蓄積を待たなくてはならないのが普通である。しばしばリアルタイム測定と呼ばれることもあるが,それは数分以上かかるタンパク質同士の拡散律速反応を観測する場合であり,本質的な会合速度を測定するほどの時間応答は困難である。こうした制限は,信号伝達系などで短時間しか存在しない不安定中間体がタンパク質-タンパク質相互作用を変化させるのを検出したいような場合には大きな問題となる。また,生化学的な要望としてクロマトで分離すると同時に相互作用を調べたいような場合が多いが,そのためには相互作用を数秒で検出する必要がある。しかし,従来の検出法ではそうした要求には応えられない。このような困難と共に,相互作用を観測するための溶媒は同じでなければならないとか,精密な温度制御が不可欠であるなどの制限があり,新しい手法が要望される。
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