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神経シナプスはニューロン間の細胞間接着である。脳に数多くあるシナプスの中でも,海馬CA3領域の苔状線維終末と錐体細胞樹状突起の間に形成されるシナプスは,神経活動に依存して最も活発に再構築されている。このシナプスの形成と再構築は,記憶や学習の基盤となるシナプスの可塑性と密接に関連していると考えられている。その形は神経伝達の場(synaptic junction;SJ)を中心に,その周りをシナプスの機械的な接着(puncta adaherentia junction;PAJ)が取り囲むという同心円状の形をしている1,2)。SJの前シナプス膜には,カルシウムチャネルが集積しているアクティブゾーンが存在し,シナプス小胞と連結している。後シナプス膜では後シナプス肥厚(post synaptic density;PSD)と呼ばれる膜裏打ち構造が存在し,神経伝達物質のレセプターが集積している。一方,PAJは上皮の細胞間接着と同様に,前,後シナプス膜が対称的な形態を保っており,細胞間接着分子が集積している。これら膜ドメインは神経活動に依存して活発に再構築されている。この膜ドメインの再構築は,記憶や学習の基盤となるシナプスの可塑性と密接に関連していると考えられている。近年,神経伝達の研究によってアクティブゾーンとPSDを構築する分子が多数単離され,SJの分子構築は明らかになりつつあるが,シナプスの形成機構はほとんど解明されていない。
一方,上皮細胞の細胞間接着には,形態学的に特徴的なtight junction(TJ)とadherens junction(AJ)が存在する。TJでは細胞膜貫通タンパク質であるクローディンとオクルーディンがTJストランドを形成し,細胞膜裏打ちタンパク質であるZOタンパク質ファミリーであるZO-1,-2,-3を介してアクチン細胞骨格に連結している3,4)。また,TJには免疫グロブリンスーパーファミリーに属する接着分子であるjunctional adhesion molecule(JAM)が局在し,細胞内でZOタンパク質ファミリーと結合している5)。一方,AJではカドヘリンが必須の接着分子として機能しており,細胞内でβ-カテニン,α-カテニンと結合している6,7)。α-カテニンは直接的,ならびに他のF-アクチン結合タンパク質ビンキュリンを介して間接的にF-アクチンに連結している。このカドヘリン-カテニン系は神経シナプスにも濃縮していることが明らかとなっており8),シナプスの形成機構は上皮細胞の細胞間接着の形成機構とよく似ており,カドヘリン-カテニン系はシナプスの形成にも必須の役割を担っている。
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