特集 薬物治療の質向上
Part 2 薬物治療を適切に個別化するための基本知識
9.妊婦と授乳婦に対する薬物治療—臨床的に問題となるケースは限られている
加陽 直貴
1
,
岩田 智子
2
,
城向 賢
3,4
Naoki KAYO
1
,
Tomoko IWATA
2
,
Ken JOKO
3,4
1しろわクリニック
2浜松医科大学 産婦人科家庭医療学講座
3菊川市立総合病院 産婦人科
4静岡家庭医養成プログラム
pp.315-323
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120020315
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風邪や便秘症,花粉症,気管支喘息などのcommon diseaseにおいて,「妊娠中」に処方される薬は非妊娠時に頻用される薬と大差はないが,妊婦の多くは,かかりつけの産婦人科で処方を受けることが一般的である。これは妊婦と医療者(産婦人科医以外)の双方が適切な情報にアクセスできないため不安に思い,産婦人科医への相談となっている1)のではないかと考える。また,「授乳中」の薬物治療について,プライマリ・ケア医は母乳育児の重要性を認知しているにもかかわらず,母親への薬物治療は授乳の中止が必要と考えている2)という報告もある。しかし,実際は頻用薬の内服中に授乳をしても,児への悪影響が臨床的に問題となるケースは限られている3)。
「妊娠中」「授乳中」の薬物治療では,ポイントを押さえ,ごく一部の禁忌薬の使用について注意すれば困難な事例と思わなくてよいことを理解してほしい。

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