日本看護倫理学会第17回年次大会 シンポジウムⅡ
いまあらためて、説明と同意を考える:あなたの経過、状況、変化にあわせた説明と同意をめざして
小笹 由香
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1東京医科歯科大学大学院
pp.92-94
発行日 2025年3月20日
Published Date 2025/3/20
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矯正歯科診療における説明と同意について
上下の歯がかみ合わない状態や歯が不揃いの状態を不正咬合と呼び、不正咬合がもたらす障害には摂食、咀嚼、発音などの顎口腔機能の障害、ならびに審美性が損なわれることによる社会生活における不都合や心理的障害などがある。矯正歯科治療はこのような障害を予防・抑制・回復することにより、患者の健康およびQOLの向上に資することを目的とする。矯正歯科治療は矯正装置を介して、歯や顎に力をかけてゆっくりと動かし、かみ合わせと歯並びを少しずつ改善していくため、治療期間が長期間にわたることが多い。さらに、治療対象者は成長発育段階の小児から成人まで多岐に亘る。
不正咬合は顎顔面に奇形を認める先天的な疾患に併発することも多いため、当分野には健常者のみならず、口唇裂・口蓋裂に代表される顎顔面先天異常疾患患者が数多く来院する。個々の先天異常疾患患者が有する様々な全身的症状に伴い、矯正歯科治療のゴールは必ずしも健常者と同一でないこともあるが、不正咬合のような顎口腔領域の形態・機能異常を改善することで、心理社会的障害の軽減につながる場合も多い。矯正歯科診療では、このように様々な患者に対して、治療や成長に伴う咬合状態の変化を評価し対応することが必要となる。評価すべき要素は機能の回復に加え、審美性の回復、さらに経済性の要素も考慮し、そこに患者本人や家族の主観的な要素が投影されることになるため、患者や家族の様子を確認しながら、治療をすすめていかなければならない。
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