連載 原著・過去の論文から学ぶ・10
『脳循環への薬物等の作用(“The action of drugs on cerebral circulation”)』とLouis Sokoloff先生から教えていただいたこと—“A Serendipitous Journey from Bench to Bedside”
後藤 淳
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1日本赤十字社足利赤十字病院第二内科
pp.77-81
発行日 2025年1月1日
Published Date 2025/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.188160960770010077
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論文との出会い
Sokoloff L: The action of drugs on the cerebral circulation. Pharmacol Rev 11: 1-85, 19591)(Fig. 1)
1988年の卒後間もない日々,慶應義塾大学病院の病棟や救急外来で,初めて出会う意識障害患者さんを前に,一体何が起きているのか多くの疑問にぶつかっていた。要領を得ない研修医であった日々,バイタルサインと神経所見が時間単位で変化する脳幹梗塞やてんかん重積,低血糖性片麻痺などの経過を必死に追っていた。50%ブドウ糖投与で覚醒度も運動麻痺も劇的に改善する光景はいまでも記憶に蘇る。指導医から教わったPlum & Posnerの“The Diagnosis of Stupor and Coma, 3rd ed”(1980年版)2)では,意識障害へのアプローチから病態生理についてプラクティカルな記述と膨大な参考文献が印象に残った。後藤文男先生(Fig. 2)の病棟回診では,Cheyne-Stokes呼吸患者さんに対して呼吸パターンから各時相での血液ガスと神経所見の変化まで検討される姿に,眼の前の患者さんをしっかり診ることの重要性を学ばせていただいた。ベッドサイドで最も簡便かつ強力な神経機能の評価法である,神経機能解剖を基盤にした神経学的診察の体得を目指す日々であった。Seymour S. Kety(1915-2000)先生,Louis Sokoloff(1921-2015)先生のお名前を耳にしたのもこの頃だった。
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