連載 私たちの体験から……9
新しき精神病院の彼方へ
安部 健司
pp.67
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900208
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私は,20歳のときに父親との相剋から家を追放され,全国を流浪する旅人となりました。生きることに疲れると精神病院をねぐらにして文学や哲学書に耽り,また,日本ビートのはしりとして女性遍歴を持ちました。或る山の女の亡霊に憑依して錯乱の際,死の淵を歩き,鹿児島の海辺の洞穴で幻を透視し,私の根源的な人間の府瞰図を天から告示されました。一介の故郷を喪失した乞食詩人,病名は内因性精神分裂病のレッテルを貼られ,精神病院派のオデッセイアと自分を見なす存在となり,現在に至ります。
私たち仲間は社会の犠牲者です。
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