連載 ケアフルな一冊6『原稿を依頼する人される人―著者と編集者の出会い』
本当に必要な言葉
坂田 三允
1
1長野県看護大学
pp.53
発行日 1998年11月15日
Published Date 1998/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900131
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類は友を呼ぶというが,私の知人には夢見がちの変人が多い。一編の作品も書いていないのに,芥川賞の受賞の弁を書くための机を持っている人。出版の目処もないまま,いくつかの賞の受賞を辞退する弁まで,しっかり書き上げている人。かく言う私も,トリックも何も思いつかないのに,推理小説で獲得するはずの懸賞賞金の使い道だけはいつも夢想している。もちろん,知人のその机は物置になっていることを私は知っているし,受賞辞退の弁の送り先もまだない。そして私の財布はいつも軽い。けれども,世の中には毎年芥川賞を受賞する人がおり,多額の賞金を受け取られている。
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