特別記事
「行動障害」から「チャレンジングな行動」という理解へ—てんかん患者のトランジション問題のなかで
谷口 豪
1,2
1東京大学医学部附属病院精神神経科
2国立精神・神経医療研究センター病院精神科
pp.318-325
発行日 2015年5月15日
Published Date 2015/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200096
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なぜ精神科医がてんかん診療にかかわるのか
私は大学病院の精神科で、てんかん専門医として働いています。
てんかんはかつて統合失調症、躁うつ病と共に「三大精神病」と言われていた時代もありました。当時はまだ有効な治療法や脳波などの検査法がなく、てんかんをもつ人は最終的には精神的な荒廃に陥いることもあったため、てんかんは精神障害と考えられていたのです。しかし、その後の抗てんかん薬の開発などによる治療の進歩や、脳波などによるてんかん発作の発現機序の解明などをきっかけに、てんかんをもつ人のなかで精神障害への道を進むのはむしろ少数派だというのがわかり、次第にてんかんの治療は精神医学から神経医学へと移っていきました*1。事実、WHO(世界保健機関)のICD分類では、てんかんはFコード(精神及び行動の障害)ではなくGコード(神経系疾患)に分類されています。
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