特集1 新しい「精神疾患」この十年
その概念はどうして生まれたか。その診断名を持つ人に、どうかかわるか
―「安全」と「安心感」で状態は大幅に改善する。全スタッフが持っておきたい「共通認識」とは。―解離性障害
柴山 雅俊
1
,
内堀 麻衣
1
1東京女子大学心理学専攻
pp.32-38
発行日 2012年3月15日
Published Date 2012/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100992
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
疾患の定義・概念・診断基準
古代エジプト時代からあった「解離」
解離の前身となるヒステリー hysteriaは古代エジプトの時代に遡ります。19世紀末、シャルコー(Charcot, JM.)の時代に、「催眠は、ヒステリーという基礎疾患がなくても生じうる」という議論が広まり、ヒステリーの概念は衰退していきました。しかし、ジャネ(Janet, P.)は時代によるさまざまな批判にさらされながらも、催眠とヒステリーの重要性について主張し続けました*1。
その後、第一次世界大戦を経て、フロイト(Freud, S.)は、「ヒステリーは他の病気と同じような1つの疾患として定義されるべきだ」と考えました。そこから、さらに身体症状が出現する「転換ヒステリー conversion hysteria」と、心的な苦痛からの逃避として朦朧状態、人格交代、健忘などの症状を呈する「解離ヒステリー dissociative hysteria」とに分ける視点へとつながっていったのです。そして後者が、「解離性障害」にほぼ相当します。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.