特集 認知症、どうしたらいい?
パーソン・センタード・ケアを精神科病院で実践する
水野 裕
1
1いまいせ心療センター・認知症センター
pp.18-22
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100884
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2~3年前、ある精神科医の書かれた医学雑誌の記事のなかに、「家族が、認知症の患者を精神科に受診させる場合は、どうしようもなくて、最後の手立てとして受診してくる場合が多い。その方たちにパーソン・センタード・ケアを説いて済む話ではない」と言うような趣旨の文章を読んだ。多くの人たち、特に精神科病院勤務の経験がある人たちは、多かれ少なかれ、このように思っているのではないか。文字通り訳せば、「その人を中心としたケア」となるパーソン・センタード・ケアなんて、どうせ、会話が交わせて、一緒に作業をしたり、楽しく出かけたりすることができる、軽度や早期の認知症の人しか見ていない人たちが言う美辞麗句であって、私たちが日頃相手にしている認知症の人は、もっと重度の人たちなんだ、そんな人にパーソン・センタード・ケアなんてできっこない……と、こんな感じだろうか。
しかし、私の勤務する病院は、そんな重度の方たちが運び込まれる単科精神科病院であり、一般の精神科患者の急性期症状でも、入院を受け入れる病院である。本稿では、このような精神科病院で、どのようにして重度の認知症の方たちに、パーソン・センタード・ケアを提供することができるかについて、主に私たちの認知症病棟(精神科急性期病棟)での活動を通して述べることとする。
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