連載 当事者研究・16
〈研究テーマ〉「“暴走型”体感幻覚の研究―もう誰にも止められない」―パートI 「体感幻覚ボディマップ」の活用
臼田 周一
1
1べてるしあわせ研究所体感幻覚研究班
pp.98-103
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100343
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.はじめに
〈臼田周一〉の自己病名は,「統合失調症・体感幻覚暴走型」である。本稿の表題にもあるように,体中を暴走する体感幻覚は「もう誰にも止められない!」というのが実感である。
〈臼田周一〉が浦河を最初に訪れたのは,2000年の3月だった。精神科への入退院と家のなかで暴れることを繰り返す生活に,とことん行き詰まっていた。不安はあったが親の勧めで浦河行きを決め,2002年10月からは親と離れて浦河で暮らすようになった。
浦河に来てからいろいろな出来事を経験した。幻聴に追いかけられて,必死になって200km離れた室蘭まで自転車で逃走したこともある。そのときには,浦河の仲間が救援に来てくれた。天井に人が隠れているような気がして屋根裏に上がり,天井板を踏みはずして転落した経験もある。いろいろなことが起きた。そうやって苦労を重ねるなかで,2004年6月に行なわれたべてる祭の幻覚&妄想大会で,部門賞である[駄洒落大賞]を受賞した(前号p.112参照)。
〈臼田周一〉は長い間,暴走する体感幻覚に引きずりまわされてきたが,最近少しずつその判別ができるようになり,起きる出来事に前よりは冷静に対処できるようになってきた。そこで,当事者研究に挑戦してみようということになった。
とはいえ「体感幻覚」は,浦河の仲間にとっても初めての研究分野である。しかも〈臼田周一〉のかかえる症状のボリュームと多彩さは,一度では整理できないほどの内容をもっている。この研究に参加してくれたメンバー,スタッフの数も過去最高である。そこで今回は,第1弾ということで発表することになった。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.