Japanese
English
研究と報告
体感異常の研究
A Study of Cenesthesia
麻生 和友
1
,
秋本 辰雄
1
Kazutomo Aso
1
,
Tatsuo Akimoto
1
1久留米大学医学部精神神経科教室
1Dept. of Neuropsych., Kurume Univ. School of Med.
pp.443-447
発行日 1968年6月15日
Published Date 1968/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201342
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Ⅰ.緒言
精神分裂病患者の訴えるさまざまな表現のなかに,よく“内臓が腐る”,“脳みそが溶けてしまう”,“子宮をいたずらされる”など,身体感覚(cenesthetic sense)についての奇妙な内容がある。われわれはこのように特異な体感の訴えが身体像(body image)の障害と関連していると思う。Fenichel1)によれば精神分裂病における身体像の障害は,いろいろな心気的訴え,奇妙な身体機能の報告,自己の身体の離人感として分裂病の諸症状のなかに,きわめて普遍的に存在するものである。このような身体像の障害に伴つて,当然思考や情動にも変化が現われると考えられ,この点Schilder2)はとくに知覚(perception)を重視して,有機体を知覚,思考,情動をもつて統合される理論的本態として身体的および精神的側面から考察している。かれは,もし知覚がなければ,印象(impression)も表現(expression)も存在しないし,知覚のない思考や情動もありえない,同時に知覚のない行為や洞察も存在しないと述べている。この考えかたは.身体像の変化が思考や情動にもなんらかの影響を与えることを示していると思われる。
われわれはこのような観点にたつて精神分裂病の諸症状のなかでとくに体感の訴えを,身体像の変容の結果としてとらえ,これに伴う分裂病性の諸観念を調査しようと考えた。そして本研究の目的を,精神分裂病と同時にそれとは少し異なつた身体像の障害をもつと思われるcenestopathieに対して,身体像の立場からとくに身体境界(body boundary)を検討することにおいた。
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