特集2 加害者のための再犯防止プログラムが動いている
①加害者臨床の可能性―「司法と医療」「犯罪と疾病」「更生と治癒」の狭間で
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.46-52
発行日 2006年5月1日
Published Date 2006/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100046
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
クライエントとしての加害者と出会う
筆者が臨床心理士として原宿に開業カウンセリング機関を立ち上げ、15名のスタッフと共に臨床活動を続けて10年が過ぎた。保険診療でもなく無料サービスでもなく、いわば医療機関と公的機関のニッチ(すき間)として存続することは、料金体系からしてなかなか困難な道である。50分12600円の料金を支払ってまで我々のカウンセリングを求める動機はどこにあるのだろう。両者では扱えない問題を対象とすること、両者よりはるかに良質なサービスを提供すること、明確な援助姿勢(非医療モデル)を示すことでしか生き延びていけないだろう、というのがとりあえずこの10年で筆者が学んだことである。
両者で扱えない問題は、この10年間で大きく変貌してきた。開業精神科医療機関(クリニック)の増加によって、アルコール依存症者はほぼ我々の対象から外れていった。近年ではギャンブルや買い物依存症なども疾病化されて医療機関に吸収される傾向にある一方で、摂食障害はクライエントとして一貫して多数が訪れている。
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.