研究・調査・報告
女性精神科看護師に聞く「男性患者からの暴力による感情体験」
岡本 喜久子
1
,
玉乃井 雅浩
1
,
山本 由紀
1
1松山記念病院
pp.93-95
発行日 2006年1月1日
Published Date 2006/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100036
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はじめに
青木ら*1の調査では、精神科入院患者から攻撃的言動を受けた看護師は82.6%に及んでいるという。一般社会では近年、ドメスティック・バイオレンスや心的外傷後ストレス障害が問題視されているが、精神科での暴力は、看護師自身が「仕方がない」ととらえる傾向にあり、看護師は感情を規制している。しかし、このことは患者との関係や看護師の心に望ましくない影響を与えている。輪湖*2は「暴力は被害者であるケア提供者の心身の痛手だけではなく、看護ケアの質の全般的低下や仕事意欲の低下、看護婦の欠勤や退職によるケア提供体制の脆弱化を招くことから、看護管理上の重要な課題である」と述べている。
筆者らは男性病棟に勤務していた際、患者からの暴言や暴力は、男性看護師に対してよりも女性看護師に向けられることが多いと感じ、不安や恐怖感をもった覚えがある。男性患者からの暴力を体験した女性看護師からは「患者に対して共感的に心を傾けてかかわることができなくなった」との声も聞かれた。
そこで今回女性看護師を対象に、男性患者から暴言、暴力を受けたことによる感情体験を明らかにすることを目的に研究を行なった。なお、この研究では「暴力」という用語を、性的接触、性的嫌がらせも含むものとして定義した。
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