緩和ケア医のひとり言・2
苦痛はどこまでとれるのか―症状緩和の目標
藤井 勇一
1
1埼玉県立がんセンター・緩和ケア病棟
pp.308-311
発行日 2000年4月15日
Published Date 2000/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902149
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実現可能な希望,不可能な希望
末期がんの患者さんはさまざまな症状を抱えている.特に痛みは比較的早い時期からみられることも多く,末期にかかわらず多くのがん患者が痛みを抱えて闘病生活を送っている.病状が進行してくると,さらにさまざまな症状が加わることとなる.倦怠感や食欲不振,腹満感,腹水や胸水,呼吸困難感,むくみ,悪心・嘔吐などの身体症状が出現してくる.
次々と出る症状に患者は戸惑い,強い不安で眠れずに緩和ケアの外来を訪れる.「先生,この苦痛はとれますか? これからどんな症状が出てくるんでしょうか」.彼らの苦痛をどこまでとってあげられるのだろう.苦痛をゼロにできればそれに越したことはない.しかし,がん患者の抱える症状は多様で,激しく,執拗で完全には緩和できないこともある.また,がんによる衰弱自体を止めることはできない.
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