心起こし身体起こし・5
思い込み言語療法・1―Iさんが喜怒哀楽を取り戻した理由
河津 孝一
1
1心と身体のカウンセリング健塾
pp.546
発行日 1999年7月15日
Published Date 1999/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688902344
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【基礎理論】
赤ん坊が「オンギャー,オンギャー」と泣いている.この「オンギャー,オンギャー」は始めは感情で泣いているのではないらしい,ただ生理的にしっかりとした呼吸運動をするとこんな声がでるということだ.この声を聴いて「生理機能だから」と放っておく母親はいないだろう.生まれたばかりでまだちょっと,この世界には慣れていない赤ん坊,おなかの中にいる時から聴いた事のある声.抱かれると暖かくなつかしい感じが肌から伝わり安心できる.「どうもこの人は『オンギャー』と言うと抱いてくれるらしい.それなら不安になったときは,『オンギャー』にかぎる」そして当分はこの方法で大抵は成功する.でもしばらくすると,「オンギャー」と言うとちょっと違う奴に抱かれる事が増えてくる.「悪い奴じゃなさそうだけれど,ちょっとゴツゴツ,それにチクチクもして嫌なんだよなぁ,そうだ,そう言えばこの間,オギャーを偶然唇をとじていったら『マーマー』になった.そしたらあのなつかしい声がして,柔らかい気持ちのいい感じの方に抱かれた.よし,また唇とじて『マーマー』と言ってみよう.やった!脱出成功!!…あれれ,ちょっと何勘違いしてんだよ.
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