音楽でホッとひと息―現代人に贈る癒しの音楽
―バーバー―弦楽のためのアダージョ/―マスカーニ―「カヴァレリア・ルスティカーナ」からの間奏曲
竹重 敦
pp.229
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901638
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癒しの音楽(ヒーリング・ミュージック)は今日図らずもブームの感を呈してきた.20世紀も残り僅か数年で終わろうとしているこの世紀末,ヒーリングは正に時代を解くキーワードの1つになろうとしている.きっかけになったペルトとグレゴリオ聖歌の大ヒットの後,流れを決定的にしたのは例の「アダージョ・カラヤン」である.カラヤンの残した膨大な録音の中から,テンポのゆったりした美しい音楽を集めてきただけのCD.元来クラシック界ではこういう単なる「寄せ集めもの」は評価されないものだが,このヒットは1つの社会現象にまでなってしまった.このようなもてはやされ方に抵抗はあるが,おすすめの曲が10分足らずの小曲の場合は止むを得ない.今回はこの手の作品を映画を絡めて選んでみる.
まずはバーバーの「弦楽のためのアダージョ」だ.バーバーはアメリカを代表する作曲家で,この作品で一躍人気を集めた.だが,この曲がこれ程までに有名になったのはオリバー・ストーンの映画「プラトーン」に使われてからだろう.後のストーン作品に顕著な強引なまでの自己主張とアクの強さがまだ鳴りを潜めている良心的な作品であるが,あの映画をあそこまで感動的な作品にしたのはこの音楽の力が大きい.
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