特集 高齢者虐待への対応を学ぶ
特集2
介護保険下での高齢者虐待の早期発見と対応
津村 智惠子
1
1大阪府立看護大学地域看護学
pp.370-375
発行日 2001年5月15日
Published Date 2001/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901308
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在宅高齢者虐待の発見者として期待されている訪問看護・介護職
わが国における近年の核家族化の進行と,めざましい女性の社会進出は,一方では家庭介護力の低下傾向に拍車をかけている。世代間での老親扶養意識の格差の拡大は高齢者世帯の孤立化をいっそう際立たせ,高齢者が高齢者を介護せざるを得ない状況に追い込み,同居の独身の娘・息子に介護負担を負わせるなど,家庭内での「高齢者いじめ」の温床にもなっていた。昨年の介護保険の発足は,この状況から脱皮するための一方策でもあった。しかし,社会保険方式で高齢者を被保険者とし,サービス料金に1割負担が生じるため,要支援・要介護高齢者と介護家族の負担となっており,全国いずれの市町村でも介護保険サービス対象の3割を超える要介護高齢者が,実際には介護保険サービス利用の申請をしないで埋もれたままの状況で放置されているという深刻な問題が浮上している。これら埋もれたままの要支援・要介護高齢者と家族のなかに,経済的困窮や介護サービス情報・知識不足などを根源とする高齢者虐待事例が多く潜在していると考えられる。
わが国の高齢者世帯の特徴の1つは,家族同居率が一桁を割る北欧諸国と比べ,5割近い同居率を維持していることである。高齢者虐待世帯については,1996年に全国の保健医療福祉機関1531機関(発送4150機関)から974例の在宅高齢者虐待事例が報告されている。
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