連載 ケアはつづくよ・12【最終回】
帰家穏坐
飯島 惠道
1
1東昌寺
pp.1034-1035
発行日 2001年12月15日
Published Date 2001/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688901253
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家に帰り療養生活を始めた患者さんを見て,「病院でみせる表情と家で見せる表情は,全く違っている」そう思った事のある訪問看護婦さんは多いだろう。病院と家では全く環境が違うのだから,表情が違って当然とも言えるだろうが,このような患者さんの変化を見るにつけ,環境が人間のメンタルな部分に与える影響の大きさを感じるのである。多くの場合,家に帰った患者さんは「良い表情」をしている。あるいは「穏やかな表情」をしている。病院では同室の人に気を遣い,医療者に気を遣いながら生活せざるを得ないのだが,住み慣れた家であれば,そのような気遣いは必要ない。このように「家に帰って,安穏に坐する事,心穏やかに坐する事」を表す禅の言葉が「帰家穏坐(きかおんざ)」である。患者・家族ともに家にて安寧の時を送る事ができるよう,木目細かなケアを提供するのが訪問系のケアラーの勤めと言えよう。
病院から家に帰って療養生活を始めるにあたり,事前にさまざまな情報を収集して在宅療養を組み立てるのも訪問看護婦の仕事のひとつだろう。皆さんはどのようにケアプランを組み立てておられるだろうか?かつての職場の先輩は「患者さんの家を見ずにはケアプランは立てられない」というのを信条としていた。そのため,訪問看護の依頼が出た患者さんのお宅には,退院前に必ず訪問し,介護用品の置き場やら,ケアへの家族の参加の仕方などについて,家族とともに考えケアプランを立てた。
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