連載 往復郵便・第5回
お漏らし体験談
頭木 弘樹
,
榊原 千秋
pp.610-611
発行日 2021年8月15日
Published Date 2021/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201733
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榊原さんに「自己否定感」について問われて、はっと不思議な気がしました。言われてみれば、自己否定感に大いに苦しんでいてもいいはずなのですが、そういう自覚がありません。
それはおそらく、病気によって自己否定感を持つ以前に、便を漏らしたことによる衝撃が大きくて、そちらに注意が向いてしまったためだと思います。健康な人でも、漏れそうになってトイレに駆け込んだことがない人はいないと思います。そして漏らしてしまった人もいるはずです。漏らしたことはないとしても、日常的に排便はしているわけです。それなのに、漏らすということは、どうしてこうも人に衝撃を与えるのか? 尊厳にかかわるほどのショックを受けてしまうのか? 漏らす自分を否定する気持ち以上に、「なぜ漏らすことはこんなにも否定的に扱われるのか?」という理不尽さへの疑問の方が強かったのだと思います。その疑問は、今も解決していません。
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