レポート こちら現場からお届けします!・第13回
扉の向こうの1人ひとり、「その人の言葉」に耳を傾ける
寺﨑 譲
1
1みんなのかかりつけ訪問看護ステーション東京
pp.612-613
発行日 2021年8月15日
Published Date 2021/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688201734
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ある訪問看護師との出会い
看護師を志したきっかけは、一人の訪問看護師との出会いでした。私の祖母は60代で筋萎縮性側索硬化症(ALS)を発症し、自宅療養をしていました。発症する前は、「孫ができたから」と50代で運転免許を取得したり、毎日畑仕事に勤しんだりと、活発に過ごすタイプでした。しかし徐々に自由が利かなくなり、一日の大半を眉間に皺を寄せて座って過ごすようになりました。
遠方に住んでいた私が祖母に会いに行ったときのこと。それまで何泊か滞在する中で、話をしたり胃ろうケアの手伝いをしたりしていましたが、私の帰り際にちょうど家に来ていた訪問看護師が、「ちょっと手を握ってあげて」と声を掛けてくれました。手を握った瞬間、ずっと眉間に皺を寄せていた祖母が表情を緩め、堰を切ったように号泣し、感情を爆発させたのです。今振り返るとその看護師は、療養する祖母の「思い」を的確に捉えていたのだろうと思います。
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