特集 懸賞論文大賞発表! 「胃ろう」をつけた“あの人”のこと
【秋山正子賞】
ミチエさんの「まんま」
小泉 純子
1
1相馬方部訪問看護ステーション
pp.764-768
発行日 2013年9月15日
Published Date 2013/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102590
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ミチエさんは、笑顔のかわいらしい、ほっこりとした88歳の女性です。2年前に脳梗塞で倒れ、右半身麻痺で寝たきりの状態となりました。失語症と構音障害があり、問いかけにうなずいたり首を振るだけの会話ですが、こちらの言うことを理解しており、単語で答えが返ってくることもあります。飲み込みがうまくできず、入院中に胃ろうが造設され、経管栄養を1日3回行なっています。2011年12月、3か月間の入院のあと自宅へ退院することになり、訪問看護が開始となりました。
ミチエさんの家は、昔から大きな農家をしており、緩やかな坂を登りきると、真っ白な蔵が見えてきます。この蔵が、ミチエさんの家の目印です。この真っ白な蔵は、ミチエさんが16歳でこの家に嫁ぎ、長年の歳月をともに過ごしてきた、ミチエさんにとってはかけがえのない大切な蔵なのです。そのことを知っている家族は、この蔵が真正面から見える応接間をきれいに片づけ、ミチエさんの部屋にしてくれました。
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