書評
―ハーモニー(就労継続支援B型事業所) 編著―幻聴妄想かるた―解説冊子+CD『市原悦子の読み札音声』+DVD『幻聴妄想かるたが生まれた場所』付
原田 誠一
1
1原田メンタルクリニック・東京認知行動療法研究所
pp.541
発行日 2012年5月15日
Published Date 2012/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102184
- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
本書は当事者の皆さんが,①自分の幻聴妄想体験を「かるた」の読み札,絵札という形で表現し,②解説冊子で生育歴,治療やハーモニー(=今回の企画の主体となったリハビリ施設)への感想,かるたへの想いなどを率直に綴り,③DVDにも出演して読者へのメッセージを発信するという,誠に独創的で先駆的な内容となっている。さらには,女優・市原悦子さんが読み札を語る素敵なCDもついていて,ユニークな魅力満載の快著と感じ入りました。本書を楽しみ味わう中で評者は新鮮な懐かしさを満喫するとともに,一精神科医として複雑なほろ苦さも体験しました。以下,その内実を記して本書の紹介とさせていただきます。
まずは「新鮮な懐かしさ」から。四半世紀にわたって精神科医をやってきた評者にとって,かるたで表現されている内容自体は馴染み深いもので,しみじみ「懐かしさ」を感じました。一方の「新鮮さ」は,(1)かるたという形式で幻聴妄想体験が言語的・絵画的に生き生きと表現されていて,(2)解説冊子とDVDで当事者の皆さんが堂々と想いのたけを語る様子に感銘を受け,(3)市原悦子さんの見事な朗読を通して,皆さんの心象風景が髣髴としてくる経験に驚嘆したことによります。加えて,診療で心理教育を行う際にかるたを早速使ってみたところ,良い手応えがみられたことも新鮮な体験でした。
Copyright © 2012, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.