連載 読むことと旅すること 人との出会いに魅せられて・10
現代版大家族物語
服部 祥子
pp.74-75
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688101778
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家族というものは、時代により、また民族や文化により、さまざまなかたちをとります。戦前の日本では、歴史的な家父長制の伝統のもと「家」の存続を最重要課題として、長男が家(か)督(とく)を継(つ)ぎ、女子ばかりの家なら娘の誰かが養子を迎えて家名を繋(つな)ぎ、舅(しゅうと)・姑(しゅうとめ)世代、息子・嫁(娘・婿)世代、さらにその子女世代という3世代を軸とする家族構成がもっとも平均的でした。その上隠(いん)居(きょ)した先代の老夫婦、分家づくり・婿入り前の次男以下の息子たち、嫁入り前の娘たちも同じ屋根の下で暮らしていましたので、さながら1本の木が上へ横へとたくさんの枝を広げて立っているような風情の大家族でした。
ところが戦後、ことに高度経済成長期を迎える頃より、多くの若・中年層が都会に流出したことや、欧米文化をお手本に夫婦を中心として自由に家庭を築きたいという風潮の高まりもあり、親から自立して暮らす核家族が急速に増えました。今では核家族や単独世帯が大多数で、3世代家族はわずかに1割しかなく、大家族で暮らす家庭は実に少なくなりました。
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