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はじめに
訪問看護ステーションからの訪問看護(以下,訪問看護)は,老人を対象に始まり,1994年には健康保険法等の改正によって年齢制限がなくなり,その中には精神疾患を有する利用者も含まれるようになった。
精神訪問看護に関連する制度としては,1995年に「精神保健及び精神障害者に関する法律」が施行され,これにより精神障害者施策は,人権に配慮した質の高い医療の提供と社会復帰の促進,および福祉施策の充実を図ることとなった。その後,2002年から市町村事業として,ホームヘルパーの派遣を含む精神障害者居宅生活支援事業が開始されている。さらに「新障害者基本計画」が策定され,リハビリテーション,ノーマライゼーションの継承,共生社会の実現をめざす重点施策実施5年計画(新障害者プラン)が示された。約7万2000人の入院患者について,条件が整えば退院可能と国では予想している。
2000年からは介護保険法が施行され,少なくとも第1号被保険者である地域の精神障害者は,介護保険のサービスを受けるようになった。
このような国の施策により,地域において何らかの看護を必要とする精神疾患を有する人は増えている。
また,社会が複雑になり,生きにくい状況におかれるなか,神経症レベルの障害を有する利用者も増えてきている。
長い精神医療の歴史のなかで,排除の対象であった精神疾患を有する人たちは,医療の対象者として,また障害者として位置づけられるようになり,そして地域でケアを受ける対象者として認知されるようになってきた。やっと地域に住むことができ,社会の光が当たるようになってきた。
今回は,日頃の実践を通して,精神訪問看護の現状と課題についてまとめてみたい。
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