連載 ほんとの出会い・7
「気配り」は優しさ?
岡田 真紀
pp.951
発行日 2006年10月1日
Published Date 2006/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100358
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- 文献概要
自分のなかにある「日本人らしさ」に,外国に出て初めて気づくことがある。学生のとき,アメリカで暮らし始めたころのこと。ワシントンDCのハワード大学という黒人大学に通っていた私が黒人家庭に住みたがっていることを知り,社会学の女性教授が友人の家族を紹介してくれた。奥さんは名門スミス大学で全学で唯一の黒人だったという経歴の持ち主。国際機関で働き,かなりハイクラスな家庭で,私はベビーシッターをしながら住まわせてもらうことになった。
話がまとまり,夜になって教授はインターナショナル学生寮まで車で送ってくれた。寮に近づいたが,一方通行なので回り道をしなくてはいけない。そこで,歩いても2,3分の距離のところで「寮はもうすぐそこですから,ここで降ろしてくださって結構です」と申し出た。本を何冊も出している大御所の研究者に回り道してもらうのは心苦しい,という気持ちからだった。
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