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はじめに
3月の終わりに東京都福祉局介護保険課から一通の封書が届いた。何だろうと開けてみると,その書類が「在宅療養支援診療所」の申請書だった。
以前に出した医療連携の書類は,連携医療機関の名前を2か所記載するだけの簡単なものだったが,今回はだいぶ変わっていた。24時間連携をする医療機関の名前を書くだけではなく,連携する訪問看護ステーションの名前,そして連携する担当医や担当看護師の名前と連絡先が必要になった。それに加えて「癌患者」をどのくらいの数診療しているかを書き入れる書式が入った。さっそく私のところで日頃お世話になっている病院と有床診療所と訪問看護ステーションに連絡を取り,記入して提出した。
今回のこの申請書の内容から読み取れるものは,これからの日本の医療のある部分の中心的な役割を,在宅医療を提供する医療機関に担ってほしいという望みであり,欧米並みに,人生の終末期,最後は患者の居宅で安心して家族や主治医に見守られて看取りができるようにしたいという厚生労働省の願いであるようだ。
それは我々国民の願いでもあり,医療者としての願いでもある。入院ベッドを持つ病院と,外来医療を受け持つクリニック,それに在宅医療と在宅ケアを受け持つスタッフの三者が,よりよい連携を取ってシームレスな医療を国民に提供するシステムがようやくできあがってきたといえる。私は常日頃から「在宅チーム医療」の必要性を説いているのだが,その連携医療が国のお墨付きになったようでうれしく思う。
これからの10年間,制度変更を行なうことなくこの体制を維持していければ,必ずや日本の医療提供体制は飛躍的によくなるだろう。今後に期待を寄せたいと思う。
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