研究報告
在宅高齢者の排便ケア―坐薬・温湿布マッサージの併用
谷垣 靜子
1
,
上野 範子
2
,
松井 敏子
3
,
小倉 勇
4
1鳥取大学医学部保健学科
2藍野大学医療保健学部看護学科
3元バプテスト訪問看護ステーション
4小倉治療院
pp.1068-1072
発行日 2005年12月1日
Published Date 2005/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100255
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はじめに
排泄は生命維持に欠かせない生理的現象である。しかし,何らかの疾病や加齢に伴い1人で排泄することが困難になると,人の手を借りることになる。「下の世話にだけはなりたくない」と願う人が多い中で,排泄に問題があると,療養者本人はもとより介護者にとっても負担が大きい。
2003(平成15)年の内閣府の世論調査によれば,家族に介護が必要になった場合に困る点として,「食事や排泄,入浴などの世話の負担が重く,十分な睡眠がとれないなど肉体的負担が大きいこと」と答えた人が62.5%と最大になっている。特に排泄の障害は,療養者,介護者ともに身体的,心理的,社会的な影響を及ぼすと考えられ,排泄の課題を軽減することは,在宅療養を継続する上で欠くことができない。
排泄障害は,排尿障害と排便障害に大別される。排便障害とは,便が出にくい状態や,便がだらだら出る(便漏れ)状態を指す。排尿障害については尿失禁をはじめとして比較的研究も進み,対策も講じられているが,それに比べて老人性の排便障害に関する研究は少ない。
排便障害があると,薬が使用されることが多い。それでも排便が困難な場合には,浣腸や摘便が実施される。しかし,これらは苦痛を伴う上,不快感の大きい処置である。また,完全に出し切るということはなく,そのあとにもだらだらと便が出ることがある。
排便ケアの開発が進めば,療養者本人の苦痛はもとより,介護者の負担を軽減することができると考える。そこで,在宅療養者を対象に,すでに看護としてこれまでに実施されてきた排便ケアを改良し,医師や鍼灸マッサージ師と協力して,自然排便に近い排便を促すケアの開発を試みたので報告する。
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