実践報告
感情不安定,不定愁訴がみられた介護者の支援とケアマネジメント―対人関係嗜癖への支援の視点から
藤江 慎二
1
1いづみの里居宅介護支援事業所
pp.290-295
発行日 2006年3月1日
Published Date 2006/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688100067
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はじめに
ドイツの哲学者であるショーペンハウアーに「ヤマアラシのジレンマ」という寓話がある。ある寒い夜,2匹のヤマアラシが温め合おうとするが,近づきすぎるとお互いのトゲで身体を傷つけ,離れれば寒さに震えてしまう。そこで2匹のヤマアラシは,それぞれの身体を傷つけず,なおかつ相手の体温を感じられる距離を求めて,ついたり離れたりを繰り返すという話である。
人間は,近づいたり,離れたりしながら,関係性を保つものである。しかし,この人間関係がうまく機能せずに,過保護・過干渉や,両面感情(アンビバレント)などが出現し,対人関係嗜癖や共依存といった問題に発展することがある。
筆者は,被介護者である夫に対する過干渉や攻撃性,感情不安定が見られ,さらに自らの身体不調を訴えるようになった妻への支援を経験した。本稿ではこの経験から,在宅介護における対人関係嗜癖への対応について,介護支援のためのケアマネジメントの視点から考察してみたい。
なお,本事例の論文への掲載については,書面にて本人と家族に同意を得ており,掲載にあたって事例の設定に多少の変更を加えている。
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