連載 シネ・プロフィル・2
最期まで女優を貫いたバーグマン
片場 嘉明
1
1厚生中央病院外科
pp.87
発行日 2001年2月10日
Published Date 2001/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902314
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「誰がために鐘は鳴る」で銃弾に倒れたゲイリー・クーパーにとりすがってむせび泣くイングリッド・バーグマンの真に迫る演技に,映画少年は陶然とし,誰もが虜になった。彼女は北欧の名花といわれたが,少女期に父と死別したゆえか早婚で,すぐに娘をもうけている。子持ちの女優は,スターでなくても歓迎されないご時世であったが,「なぜ,女優が子どもを産んではならないのですか。ごく自然のこと」と主張し,この姿勢は,終生変わることはなかった。ロッセリーニ監督との駆け落ちを含め,3回の結婚は,心の赴くままに従う強い性格を示しているが,実らない恋もあった。
第2次大戦後,米兵の慰問にベルリンへ来ていた彼女は,写真家ロバート・キャパと邂逅,恋におちる。廃墟と化した街でふと壊れたバスタブを見つけたキャパが「世界的な女優の入浴シーンが撮れたら,すごいスクープだ」とふざけると,彼女はためらうことなく,もちろん服のままそのバスタブに入った。意外に知られていないが,そのとき,映画から離れ,心から楽しむ飾らない真の彼女が撮られたスナップの美しい横顔が印象深い。その後,キャパは,インドシナ戦線で取材中に地雷に触れ,非業の死を遂げた。
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