連載 環境?!・23
時の止まった棚
筧 淳夫
1
1国立医療・病院管理研究所 施設計画研究部
pp.867
発行日 2000年11月10日
Published Date 2000/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686902279
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一概に精神科病棟といっても,分裂病や躁鬱病,ストレスによる精神症状など,対象とする患者によって,空間構成や色彩といった建築的な設えは大きく変わってくるはずである。もちろん,痴呆症専門の病棟や保護室といった極めて特別な場合は,施設基準も違うので,建築的な特色が見られる。
しかし,多くの精神病院を訪ねてみると,疾病や重症度といった医療上の要求とは別の要件で,その病院ごとに療養環境上の大きな違いが見られる。それは,その病院の管理者や職員が持っている,精神疾患患者に対する「姿勢」の違いのように思えてくる。ナースステーションはオープンカウンターにするのかどうか,保護室の便器や壁の仕上げをどのような材料で作り上げるのかなど,1つひとつがそれぞれの病院での「限られた」「狭い」経験と知識をもとに作られたものである。それらは,まさに患者に対する医療者側の姿勢を鏡のように表わしているようにも思える。
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