連載 チーム医療の現場から医療制度を考える・12【最終回】
傍観者のままでいるのは止めよう
本田 宏
1
1埼玉県済生会栗橋病院外科
pp.971-973
発行日 2002年12月10日
Published Date 2002/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901567
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
机上の空論からコスト分析へ
厳しい医療環境のなか,日本中の病院が生き残りをかけて悪戦苦闘している。患者さんに対するサービス向上や在院日数短縮を目標に,当院外科でも,内視鏡外科手術,そして今春からはクリニカルパス(CP)の導入を開始した。しかし,その結果,皮肉にも経営上の大きな問題に直面することとなった。その具体例として鼠径ヘルニア,腹腔鏡運下胆のう摘出術,大腸がん切除手術の例をご覧いただきたい。表1はCP導入前後,表2は開腹手術と内視鏡手術の差を表わしている。現時点で当院の実情を見る限り,CPや内視鏡手術は,入院日数を短縮させる効果は期待できるものの,診療報酬の面では,病院にとってマイナスとなっている。特筆すべきは,大腸がんの開腹手術の平均診療報酬点数が24日入院で約122万円なのに,より多くのスタッフと時間,そして器材を必要とする内視鏡手術の総診療報酬が19日で100万円弱という矛盾した現実である。米国の盲腸にかかる平均的な費用一泊240万円と比較すると,もう口に出す言葉もない。
その結果,当院外科の手術件数は昨年より増加傾向なのに,ベッド稼働率,稼動額ともに減少するという大問題に直面することになった。もちろんより一層の在院日数短縮と手術件数増加が,その解決策であることはわかっている。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.