連載 続・白衣のポケット・23
知る責任
志水 夕里
pp.888
発行日 2002年11月10日
Published Date 2002/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901546
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人生の先輩だから敬う。病を抱えているから労る。死の受容はできないものだから,医療者が行動変容する。これでいいのか。
患者にセクハラされたとか,無謀なわがままに付き合いきれないということではない。入院目的にそぐわない患者の主張,行為は,人間として抗議・拒否してよいと私は思う。断ることが対等な関係を求めることだとも思う。実際に拒むのは,結構勇気がいるけれど。 緩和ケア病棟で働いて,次第に増していく閉塞した思いは,患者本人の,病状認識の拒否についてである。ホスピス的なケアを求めて入院してくるのだから,皆,自己の死を,予後を知っているのだと思っていた。ところが,実際に,自分が終末期と知って,残された日々を苦痛なく過ごす手段を得るため,緩和ケアを望んだという人は,3割に満たないのではないか。家族に勧められたから,アメニティが充実しているから,前院の対応が不満だから,長期入院できる場所がないから。さまざまな社会問題の一端であることも多く,一言では片づけられないが。
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