看護管理 調査・研究
大学病院における癌告知についての一考察―大学病院とがんセンターの医師・看護婦の意識の比較
近藤 暁子
1
,
渋谷 優子
1
1東京医科歯科大学医学部保健衛生学科
pp.392-398
発行日 1994年9月15日
Published Date 1994/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900279
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はじめに
現在,アメリカ合衆国をはじめいくつかの国々では,癌告知は当然のこととして行なわれている.わが国においては賛否両論が唱えられ,いまだ画期的な動きは見られない.様々な調査によると,60~80%の患者が告知を望んでいるが,1993年5月8日の朝日新聞の報道によると,約2割の患者しか告知されていない.これが現状だとすると,残りの患者は告知を望んでも告知されていないことになる.したがってこれらの患者は,自分の余命を自分の意志でどう過ごすか決定する機会を与えられず,不安の中で死を迎えている場合も少なからずあると考えられる.国公立のがんセンターでは,欧米並みに近づき,70~80%の患者が告知されているという.しかしながら,同じく癌患者に対する高度医療を行なっている大学病院においては癌告知はまだ広く行なわれているとはいえない.患者中心の医療という観点から考えると,これはがんセンターだけではなく,あらゆる医療機関に共通する問題といえる.そこで,大学病院の癌告知の実態を把握し,今後の癌告知問題についての医師,看護婦のあり方を考察することを目的に,医師と看護婦を対象にアンケート調査を行なった.
ここでは癌告知とは,癌であることを患者に伝えることである.インフォームド・コンセントの一部として不可欠であり,真実の告知をすること.そのことにより病気の受容ができ,患者にとっては今後の計画を立て,QOLにつながるものを目指す.
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