特別記事
看護と生命倫理―特に看護行為における倫理的意志決定の問題を中心に
澤田 愛子
1
1北海道大学医療技術短期大学部
pp.166-173
発行日 1992年5月15日
Published Date 1992/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686900098
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はじめに
閉鎖的な日本の医療界にあっても,最近,医師・患者関係の見直しが叫ばれ,インフォームド・コンセント(informed consent;よく情報を与えられた上での自発的同意)なることばも,しばしば聞かれるようになってきた.このことばは米国から輸入されたものであるが,それが従来よりの権威主義的なこの国の医療に風穴を開けるものとなれば,まことに結構なことである.既に米国においては,患者の権利運動と連動したバイオエシックス(生命倫理)の風土の中で,そうした概念は定着したものになっている.一方わが国は,米国から遅れること30年にして,ようやく今出発点に立ったばかりといえよう.そして一部には,この概念の導入を医療改革の機軸に据えようとの動きも出てきており,また一方ではこれと平行して患者の権利宣言書の起草の動きも活発化している.従来のように,医師がシンボルとしての父親になってすべてを取り仕切り,患者は従順な子として,お仕せしていればよいという風潮(パターナリズムpaternalism)が,すべて悪いというのではない.けれどもこのような関係は,必然的に上下の差異をもたらし,往々にして治療をめぐる不明朗な結果を生じてきたことも事実なのである.医師・患者関係の改善は,必ずやわが国の医療に質の向上をもたらすものであると筆者には確信できるのである.
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