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私は,マグネット認証の更新に向けたプロジェクトに事務職として参画しました。具体的な職務としては,(1)平常時には患者経験調査をはじめとした各種指標データの管理やモニタリング,定例打ち合わせでの議事録作成などを行い,(2)書類審査のフェーズではそれらに加え,「組織概要(Organizational Overview)」の分担執筆や,関係者で会議室に缶詰めになりながらの申請資料の作成・チェック,翻訳会社との折衝,当院担当者の努力の結晶である数多くの事例ファイルを指定された様式に整えアップロードするという仕上げ作業などに取り組みました(写真)。(3)サイトビジット(実地審査)の段階においては,航空券・ホテルの確保や空港への出迎えなどを含む審査官(アプレイザー)対応,通訳のアレンジ,本部の設営と運営,飲食物の手配といったロジスティクス業務を主として担当しました。これらの各種調整・準備業務に際しては,医療従事者ではない事務職のジェネラリスト的な視点を大切にしつつ,法務課兼務という持ち味を生かしながら貢献できるよう意を用いてきたところです。総じて看護師の方々がその専門性を十二分に発揮することができるよう,黒子として後方支援に徹してまいりました。
こうした職務を振り返って私が想起するのは,Meta創設者のマーク・ザッカーバーグ氏がハーバード大学の卒業式で語った次の逸話です。それは,NASAを視察に訪れたジョン・F・ケネディ大統領が清掃職員に対して「どんな仕事をしているのか」と問いかけたところ,その職員が「月に人類を送り込む手助けをしています」と答えた,というものです。ザッカーバーグ氏は,こうしたプロジェクトが職務にあたった人々に「目的(purpose)」を与えただけではなく,「私たちは偉大なことをなし得るのだ」という「誇りの感覚(a sense of pride)」をもたらしたのだと評しています1)。マグネット認証にはまさしくこうした❶大きな目的意識と❷誇りの感覚をもたらしてくれる力があるのだと感じます。ヨリ正確には,自分の中にある目的意識と誇りの感覚に自覚的になること,そしてそれを表現することを促してくれる,というべきかもしれません。例えば,❶大きな目的意識については,明るく楽しく働き続けられる組織とは何かを自問自答する中で,自らの職務が組織の理念に根差していることを今一度気づかせてくれました。また,❷に関しては,「微力ではございますが……」といった日本的な謙遜の枕詞なくして「私は私の組織の一員として貢献できることを誇りに思います!」と胸を張って言い切れる,留保のない率直な誇りの感覚を得ることができました。
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