連載 おとなが読む絵本——ケアする人,ケアされる人のために・146
何はともあれ外に出てみよう
柳田 邦男
pp.740-741
発行日 2018年8月10日
Published Date 2018/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686201059
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エッセイや評論にしろ長編のノンフィクションの作品にしろ,取材によって事実を確認したり出来事の真相を究明したりする作業に時間をかけても,なかなか事実の確認ができず,真相に迫れないことが,しばしばある。原稿が先に進まないのだ。
そんな時には,自分を急かさないで,出来事と関係のある人に会ったり,関係のある場所を訪ねてみたりしていると,ある日突然に突破口が開けることがある。それは偶然のことのように見えるけれど,私はそうは思わない。たまたま幸運に恵まれて宝物が落ちてくることに気づいたというのではない。何とか真実を明らかにしたいという思いを抱いて,感覚の網を張りめぐらせ,たゆまずに探し求め続けていると,まるで答えが向こうからやってくるかのように,目の前のドアが突然開かれる瞬間が生じるのだ。それは単なる偶然ではなく,真実を求め続けたことによってもたらされる果実と言うべきものなのだ。私はそう考えている。
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