連載 おとなが読む絵本――ケアする人,ケアされる人のために・99
夢のなかで遊ぶ子どもの世界
柳田 邦男
pp.802-803
発行日 2014年8月10日
Published Date 2014/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686103170
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インドネシアのある島では,子どもの頃から,見た夢をその日のうちにお年寄りに話すという日常生活の文化があるという。かなり前だが,臨床心理学者で夢分析の専門家でもあった河合隼雄先生がご健在だった頃に聞いた話だ。その島では,心の病気になる人が1人もいないというので心理学者や精神医学者が関心を持っているとのこと。
なぜ夢を見たら誰かに話すと,心の病気にならないのかはわからないが,私なりに推測すると,こういうことではないかと思う。夢は恐怖体験や抑圧感情,ストレス,恨み,あるいは強い願望,性的欲求などのどれかが引き金になって脳を活性化し,日常生活とは脈絡のないドラマとなって現われるものであろう。そうであるなら,見た夢の内容を覚醒後に言葉にして誰かに話すということは,心の中の葛藤や苦悩や抑圧感情をいつまでも引きずらないで表に引き出して第三者に一端を引き受けてもらうという効果をもたらすことになるに違いない。
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