特別記事 提言
―患者もスタッフもいきいきとするケアを行なうために―治らない病気とともに生きる患者のQOLを考える
中島 孝
1
1国立病院機構新潟病院
pp.563-568
発行日 2012年7月10日
Published Date 2012/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102480
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はじめに─ケアの意味を再考しよう
医療を改善するための科学的方法・指標といわれているものには,かえって混乱を引き起こすものがある。例えば効率性を論じている病院経営管理指標や機能評価には,効率性評価のための対象,ケアの意味,真の医療アウトカムは定義されておらず,代理指標のみが提示されているだけである。このため,代理指標の改善が医療の質改善に対応しない問題が起きている。
現代では,あらゆる患者が救急や外来を通して急性期病院に集中し,問題となっているが,いわゆる治癒をめざせない慢性疾患患者,難病患者,認知症患者,がん患者,超高齢者もそのなかの大きな割合を占める。これは社会の高齢化によって起きた現象ではない。「健康」を増進するための地域保健医療計画と診療報酬体系のパラダイムによって,あらゆる人々が急性期病院に一律に導かれているのだ。上記の治癒をめざせない患者に対して,治る患者向けの医療モデルとクリティカルパスが標準適用され,効率性を高めるために平均在院日数短縮という代理指標が使われる。そこでは,患者は早く病院から外に出すことが,理想の病院医療の姿とされている1)。
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