連載 グループ・ダイナミックスへの招待 本当に病棟を変えたい人のために・11
言語の「かや」―ナラティヴセラピー
杉万 俊夫
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1京都大学大学院人間・環境学研究科
pp.342
発行日 2012年4月10日
Published Date 2012/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686102411
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人間は,言語を使う動物です。言語は現実を描写するだけではありません。未来を創造していく武器にもなります。今回は,新しいナラティヴ(語り)を創ることによって問題を解決するカウンセリング技法,ナラティヴセラピーを紹介します。これには問題の原因をクライエントの心のなかに求めないという大きな特徴があります。患者さんといかに接すべきかを考える参考にしてください。
ニックという小学生がいました。ニックは「遺糞症」という問題に苦しんでいました。ニックは,トイレでの排泄が満足にできないばかりか,自分の糞を平気で壁に塗ったり,引き出しに入れたりしていました。両親もさんざんニックの奇行に振り回され,途方に暮れていました。何人ものカウンセラーを訪れましたが,何も改善はみられませんでした。
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