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はじめに─「せん妄回診」実施のきっかけ
2004(平成16)年4月に新日鐵広畑病院(以下,当院)に老人看護専門看護師(以下,老人看護CNS)として就職し,当院における老人看護上の課題は何かと現場の状況を整理していくなかで,高齢者に発症しがちな「せん妄」に苦慮する現状が見えてきた。
当院は地域の中核医療を担う急性期の病院であり,せん妄の原因となる疾患・症状をもつ患者や,せん妄が起こりやすい背景を抱えた患者の存在が大きく影響しているものと思われた。
しかし当時「せん妄」という言葉にほとんどの医療者が耳慣れておらず,せん妄を発症している患者を目前に「認知症になってしまった!」と誤った捉え方をしたり,錯乱している状態だけをみて「不穏」という言葉ひと言で言い表わすような状況であった。それゆえ,せん妄発症原因や要因のアセスメントはもちろんのこと,治療・ケアともに十分ではなく,薬剤による過鎮静が起こり,やむを得ない身体拘束によってその場を凌いでいる現状であった。
せん妄は,意識混濁,注意能力の減退,認知機能障害,精神運動性障害,睡眠・覚醒リズムの障害などが急激に現れる状態であり,症状は一日のうちでも日内変動を示す1)。入院患者の10~30%,高齢者では30~40%に発症し2),在院を複雑化させ,有病率と死亡率,そして医療費を増大させるといわれている3)。当院も例にもれず,これらの問題を抱えていた。
「この状況を何とかしなければならない! 高齢者も医療者も救いたい!」と強く思い,せん妄への介入として大切な①発症を予測し対処できること,②発症しているかどうかを判断すること,③その原因や要因を判断・予測できること,④発症時に適切な介入ができること,⑤介入の評価ができることすべてにおいて力不足であった当院の現状を変化させなければならないと感じ,老人看護CNSとして効果的な取り組みができないだろうかと考えるようになっていった。
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