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はじめに
●日本の職域を取り巻く変化
近年,日本の職域では,職業生活などに関して強い不安やストレスを感じている労働者が6割前後で推移し(平成19年度の労働者健康状況調査),業務による心理的負担を原因とする精神障害等にかかわる労災認定件数が年間200件を超える高い水準で推移するなど,メンタルヘルス対策の重要性が増している。
また同時に,労働者の意識や就業行動の変化として,平成20年版労働経済白書では「仕事に対する意欲」や,「仕事を通じて得られる満足感」が長期的に低下していることが重要な課題として取り上げられている。白書ではさらに,近年多くの企業の処遇・賃金制度において年功的要素に置き換わる形で導入された業績・成果主義的な要素における「評価基準の明確化」や「評価結果の説明」などに課題が残り,「評価の納得性が確保されていない」ことが,仕事に対する意欲の低下の大きな理由のひとつとして指摘されている。
●組織公平性を考慮する意義
「組織公平性」は職場の心理・社会的要因の一つとして,過去数十年にわたり主に海外において多くの研究が実施されてきた概念である。組織における評価を切り口とし,評価の結果の公平性(分配公平性),評価決定の手続きの公平性(手続き公平性),手続きの際に評価者から受ける扱いの公平性(情報公平性,対人関係公平性)の要素から構成されており,心血管疾患やメンタルヘルス不調をはじめとする健康要因,職務満足感を始めとする多くの業務関連の態度・行動に影響を与えることが報告されている。
産業保健職にとって重要な課題であるメンタルヘルス不調への対策,評価決定者である企業の管理職にとって重要な課題である「評価の納得性を確保して労働意欲の低下を避ける」対策,「組織公平性」は近年重要視される両方の課題に共通する「キーワード」として,日本の職域において考慮すべき意義が増していると考えられる。
以下では当事業所で実施した組織公平性に関する予備調査,管理職研修・効果について紹介する
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