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はじめに
遺伝カウンセリングとは,患者・家族のニーズに対応する遺伝学的情報およびすべての関連情報を提供すること,さらに本人や家族がそのニーズ・価値・予想などを理解した上で意思決定ができるように補助することである1)。
周産期医療の現場では,超音波診断法をはじめ,羊水や絨毛や胎児の血液等を用いたさまざまな出生前診断法が進歩し,胎児の染色体異常のみならず,多くの遺伝性疾患について罹患の有無が診断できるようになった2,3)。日本人類遺伝学会の出生前診断に関する見解によれば,妊娠前半期に行なわれる出生前診断は,胎児が重篤な遺伝性疾患などに罹患している可能性があり,何らかの手法により精度の高い診断情報が得られる場合に考慮される4)。すなわち,染色体異常や遺伝性疾患の保因者といった特定の背景を持った夫婦の場合は,絨毛採取や羊水穿刺などの侵襲的な出生前診断を受ける機会を持ちうることになる。
しかしながら,出生前診断の結果次第では胎児の生命をめぐる価値の対立が発生し,倫理的問題にまで発展する可能性をはらんでいる。このような医療に携わる者は,状況ごとに起こりうる倫理的問題を予測し,十分に検討する必要がある。
遺伝子診療において,さまざまな専門家によるチームカンファレンスは,遺伝カウンセリングを行なうための適切な情報を得る上でも,倫理的問題を討議する上でも重要であり,また,事例ごとに対応したcase-based ethicsの観点で対応することが倫理的問題の解決に有用であると考えられている5)。
本稿では,出生前診断に関する周産期遺伝カウンセリングで出会う倫理的問題から,チームカンファレンスの重要性について述べたいと思う。
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