研究報告
フィリピン人看護師の国際移動を支える社会システムの現状と日本進出の可能性―フィリピン主要関係機関へのヒアリング調査から
朝倉 京子
1
,
朝倉 隆司
2
,
兵藤 智佳
3
1新潟県立看護大学看護学部
2東京学芸大学教育学部
3早稲田大学平山郁夫記念ボランティアセンター
pp.172-177
発行日 2007年2月10日
Published Date 2007/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100671
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本研究は,フィリピン人看護師の国際移動の背景にある公私の送り出しシステムや政策の実情,ケア・適応言説の検証,彼らの国外流出が国内の医療と看護教育にもたらす影響,日本での就労の可能性と問題点などを,フィリピン国マニラ市内で政府官僚,看護専門職能団体,看護学部,国立大学病院などのkey informantsを対象にした聴き取り調査から明らかにした。すなわち,フィリピンからの看護師国際移動は移民労働の女性化の一翼を担っていること,フィリピン国内では看護師の国外流出に伴う深刻な頭脳流出と医療の質の低下が存在するがそれを抑制する政策は存在しないこと,「ケアリング能力および適応能力を備えたフィリピン人」という言説による強力なマーケティングが海外労働を促進していた。日本におけるフィリピン人看護師の受け入れは未定であるが,フィリピン人看護師の国際移動に関する正確な情報を基に彼らを理解する必要があると考えられた。
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