連載 エイズと共に生きる人々と看護職者たち in タイ[最終回]
世界の中での一人の看護師であること
近藤 麻理
1
1兵庫県立大学看護学研究科博士後期課程
pp.1057-1061
発行日 2004年12月10日
Published Date 2004/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686100595
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社会問題としてのエイズ
タイ国内のエイズの総数は1984年からの累計で100万人を越え,現在も60万人以上の人々がエイズと共に生きていると推定されています。年齢別では25~29歳が27.0%と一番高く,次に30~34歳の25.3%と,25~34歳で全体の50%を越えています。男女比は2:1で,感染経路は性交渉が一番多く,次に麻薬注射,母子感染,輸血の順です。新規感染者数は,1998年をピークにどのグループも減少していますが,女性と子どもの数だけは横ばいを続けているのが特徴です。
タイでは新規感染者数が減少し,予防教育もしっかり行なわれている現在に至ってもなお深刻であるのは,社会における偏見や差別の問題だといわれています。ふつう人は,自分はこれこれの病気であると,社会に対して公表しなければならない義務など全くありません。ですから,そもそも“カミングアウト”という言葉が特定の病やまいに使用されること自体,その病が社会的な意味をもっていることを大きく露呈していることになるでしょう。
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