巻頭言
世界の中の日本
矢崎 義雄
1
1東京大学第三内科
pp.951
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900353
- 有料閲覧
- 文献概要
東西の冷戦が緩和し,東欧諸国の民主化へと平和ムードが盛り上がったところで突然湾岸戦争が勃発,しかし心配された化学兵器,核兵器の使用がなく,米国リードのもとで長期化することなく収拾された.ところが,ソ連経済の破綻,民族運動の高まりと,世界情勢の不安定化要因はまだ依然と存在している.わが国の外交も,この間振り回され通しで,90億ドルにも及ぶ湾岸援助,コメ開放をめぐる貿易摩擦など,次々と迫りくる難関を越えるのがやっとの状況でした.このような中で,日本の経済を基盤とした力が次第に世界に認められつつあることも実感として持っようになった.それは欧米人の対日感の上でも大きな変革となって表れている.以前は援助を与えるという対応であったが,現在では激しく凌ぎをけずる対等の競争相手として認識されるようになった.
この台頭しつつある日本のイメージの中で,医学の占める位置はどのようなものであろうか.数年前になるが,フランスの新聞社が米国において各専門領域の研究者を対象としたアンケート調査で,今後の競争相手となる国はどこであるかを問うた記事があった.半導体とこれを用いたコンピュータ関連では,他を圧倒して日本がトップであり,自動車などの工業生産品や工業技術も同様であった.しかし生物学関係になるとヨーロッパ諸国に大きく水をあけられていた.なるほど厳しくよく実情を捉えていると思った.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.