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はじめに
目標管理は,組織の目標と個人の目標が互いに達成できるような人間尊重の理念に基づいた管理方法である。目標管理は,企業において一般的に行なわれており,病院組織にも目標管理が導入されつつある。兵庫県立尼崎病院(以下,当院)でも,数年前から目標管理を導入して看護長(当院では,看護部内の第一線監督者を看護長と呼んでいる)による目標面接を行なってきた。
目標管理において重要なのは,上からの押し付けでなく,スタッフ各自がそれぞれの目標に対して主体的に取り組めるよう動機づけることにある。そのためには,看護長とスタッフが十分なコミュニケーションを図り,病院の目標,看護部の目標,そして所属の目標を示したうえで個人の目標とのすり合わせを行なうことが必要である。
ところが,目標管理の考え方を理解し,看護長として実際に目標管理をするために,目標面接を実践していても,スタッフが主体的に目標設定を行なったり,その目標に対して行動を起こしたりするように促すことの困難さに直面することが多かった。そのようなときには,所属部署の目標をそのまま個人の目標にしたり,また,個人の目標が見つけられないスタッフには,本人が十分納得しているのかどうか確認しないままに,看護長の望むような目標を決めたりすることもあった。
このような状況に悩み,看護長研修で「目標管理」について学習し,有効な目標面接とは何かを試行錯誤してきた。ちょうど時期を同じくして,兵庫県立看護大学(現兵庫県立大学看護学部)との共同研究の機会を得,その研究でキャリアカウンセリングの考え方に出会った。キャリアカウンセリングを学び,その技術を実際にスタッフとの面接で活用してみると,これまでの目標面接とは異なる角度からスタッフと向き合え,コミュニケーションをもつことができた。今では,押し付けの目標管理から脱皮できる手応えを感じはじめている。
ここで,目標面接とキャリアカウンセリングの相違を明らかにしながら,私たちが実践中のキャリアカウンセリングについて紹介したいと思う。
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